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役員に対する病気見舞金の取扱い

投稿者:柏樹 正一倶知安

|2021年09月06日(月)

税理士 柏樹 正一のコラム(第52回)

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 会社が医療保険に加入し、役員の病気入院に伴って、保険会社から受領した入院給付金の一部を見舞金として役員に支払うケースがあります。

 法人が役員や使用人の慶弔、福禍に際し一定の基準に従って支給する金品に要する費用は福利厚生費として取り扱われ、役員に対する病気見舞金も、その金額が社会通念上相当なものであれば福利厚生費として損金の額に算入できます。
 しかし、役員に対する病気見舞金のうち社会通念上相当な金額を超える部分の金額は、給与と取扱われ、源泉課税や定期同額給与非該当による損金不算入の問題が生じます。

 この社会通念上相当な金額について、法令や通達で明確な金額基準は示されていません。
 これについて、過去に国税不服審判所で見舞金が社会通念上相当な金額を超えるか否かが争われた事例(平成14年6月13日裁決)があります。

(事例の概要)
  会社は、役員の入院給付金(3回分)として799万円を保険会社から受領し、見舞金規定に
 基づきその半額の399万5千円を役員に支払い、福利厚生費として損金の額に算入した。
(会社の主張)
  見舞金規定に基づいて支払い、福利厚生費として損金の額に算入したのであるから、合理的で
 ある。
(税務署の主張)
  税務署管内の役員に対する見舞金規定がある法人の支給状況を検討したところ、入院一回当たり
 3万円が社会通念上相当な金額と認められる。
(審判所の判断)
  地域、法人の営む業種、規模を勘案した類似法人のうち、役員に対する見舞金規定がある8社の
 支給状況を検討したところ、入院一回当たり5万円が社会通念上相当な金額の上限と認められる。

 社会通念上相当な金額について、明確な金額基準はなく、会社は類似法人のデータを知り得る立場にないため、非常にデリケートな問題といえます。
 審判所の裁決は、あくまでも個別事例で、地域、業種、規模などを総合的に勘案する必要があるとはいえ、実務上、参考となる事例ではないでしょうか。

 

倶知安事務所 所長 税理士 柏樹 正一

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