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相続税と贈与税の一体化が先送り

投稿者:高橋 徹岩内

|2022年02月07日(月)

税理士 高橋 徹 のコラム(第39回)

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 相続税は財産が多ければ多いほど税率が高くなります。このため、富裕層を中心として、暦年贈与制度(年間110万円まで非課税で贈与できる制度)を活用し、長い年月をかけて財産を減らすという「節税策」が人気でした。

 与党が2020年12月に発表した「令和3年度税制改正大綱」に、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」とされたため、贈与税について大きな改正がなされるのではと専門家の間で話題となっていました。

 具体的には、
・生前贈与が無効となる持ち戻し期間が延長される。
 現行では「亡くなる3年前までの贈与財産は相続財産に加える」こととされていますが、生前贈与が無効となる期間を10年、長ければ15年に延長するのではないか。
・孫に対する贈与も持ち戻しの対象にする。
 現行の3年内加算のルールの対象者は、「相続又は遺贈により財産を取得した人」とされており、いわば、相続人に対する贈与に限定されていますが、子供の配偶者や孫に対する贈与についても持ち戻しの対象にするのではないか。
・暦年課税制度そのものを見直す。
  暦年贈与の基礎控除110万円を減額、あるいは廃止し、相続時精算課税制度に統一するのではないか。

 というもので、昨年末の一部の雑誌には、令和4年度改正で決まると令和5年1月1日から適用され、これまで同様に生前贈与ができるのは令和3年12月31日までと、令和4年末までの2回しかありません。「急ぎましょう」という記事が大々的に掲載されていました。

 ところが、タイトルに記載したとおり、2021年12月に発表された「令和4年度税制改正大綱」では「相続税と贈与税の一体化」について、「令和3年度税制改正大綱」と同じ表現が記載されましたが、改正案の提出は見送り(先送り)となりました。 
 しかし、近い将来、「相続税と贈与税の一体化」に踏み切る姿勢であるのは変わりません。
 今後、最速の改正なら残された生前贈与のチャンスは令和4年と令和5年の2回だけという可能性もあります。
 相続税の課税が予見される人は、対応を検討したほうがいいでしょう。

 

岩内事務所 所長 税理士 高橋 徹
 
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