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なかの語録

100年企業をめざす「事業の承継」(第4回)

【連載】事業承継入門|2013年04月01日(月)

5.事業承継の準備が不十分だったらどうなりますか?

flair   POINT

1►事業承継に伴うリスク
2►事例で学ぶ ①遺言書を遺さなかった失敗
3►事例で学ぶ ②事業承継を早まった失敗
4►事例で学ぶ ③後継者を選んでいなかった失敗

  
     事業承継に伴うリスク

 事業承継をすすめるに当たり、あらかじめどのようなリスクがあるか想定し、円満な事業承継に向けて準備と計画が必要です。もし、準備不足のまま事業承継を進めれば、経営者が思い描いていた企業の未来像とはかけ離れてしまうでしょう。
事業承継に伴うリスクは次になります。teoria-g-b003.png

 ① 経営機能の不全
 ② 新経営体制の分裂
 ③ 経営権の分散と不安定化
 ④ 相続争い
 ⑤ 高額な税負担

     事例で学ぶ ①遺言書を遺さなかった失敗
 小売業を数店舗経営するAさんは、2人の子供がいます。後継者としては長男を就任させる予定です。弟は以前グループ会社を任せていたが失敗し大損失を与えたため、出入り禁止となっています。Aさんの財産は、自社株の他に事業用の不動産などです。

 事業承継準備を進めている途中で、Aさんが突然死亡して相続が発生しました。

 長男は母(Aの配偶者)とともに、事業用資産を全て相続することとなっていました。しかし遺言書を作成していなかったため、遺産分割協議が開始されました。

 弟は法定相続割合で分割することを主張し、事業用不動産の大半を弟に相続させざるを得なくなりました。結果的に、事業が承継前の半分まで縮小してしまいました。


     事例で学ぶ ②事業承継を早まった失敗
 Bさんは従業員が20名ほどいる工務店を経営していました。工務店は長女が経理を行い、長女の婿がBさんの片腕として支えてきました。また数年前に、学校を出たばかりのBさんの息子が働き始めました。

Bさんは、しっかり者の長女と婿がいれば安心と、何も準備をせず突然に、息子に事業を承継してしまいました。しかし、下積みもしていない息子と、今まで苦労してBさんを支えてきた長女と婿とは、経営に対する考え方teoria-h015.pngも合わず、争いが増える毎日でした。

 長女と婿は、長いお付き合いの顧客を連れて別会社を作り、出て行きました。
 息子が承継した工務店は、仕事が無くなり倒産することになりました。
 

       事例で学ぶ ③後継者を選んでいなかった失敗
 Cさんは、職員15名を抱える、会計事務所の所長でした。この会計事務所の税理士は、Cさんだけでした。会計事務は、顧問先も順調に増え安定した経営状態でした。

 Cさんには、16歳の長男、14歳の次男、11歳の3男の3人の子供がいて、長男が将来後を継いでくれると思っていました。しかし、まだ49歳でしたので事業承継はまだ先のことだと考え、具体的な対策は立てていませんでした。

 ところがある日、交通事故でCさんは亡くなってしまいました。C夫人は専業主婦で、税理士でもありませんでした。長男も高校生ですし、もちろん税理士資格はありません。職員も全員が無資格者です。teoria-b025.png

 後継者が不在の状態となり、職員が顧問先を連れて他の事務所へ行ってしまいました。結果的にCさん家族には、僅かなCさんの生命保険金が残っただけでした。
 


 準備不足で、事業承継が失敗すれば、親族内の争いや従業員や顧客の流出につながります。
最終的に事業が縮小や、倒産という結果になりかねません。

teoria-a035.png業承継には、身内や関係者への根回しはもちろんのこと、後継者の教育、株価対策、内部体制対策、生前贈与、相続対策などいくつもの要素が絡み合います。 

1年や2年でできることではありません。
じっくりと時間をかけた計画を立て、後継者へバトンタッチしてください。


info02 次回タイトル
 【事業を承継する利点は何ですか? 事業承継の準備はいつから始めればいいですか?】
                       H25.5.1 更新予定です。どうぞお楽しみに!!

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