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なかの語録

100年企業をめざす「事業の承継」(第54回)

【連載】事業承継入門|2015年05月01日(金)

55.わが社でも経営承継円滑化法を利用できますか?

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flair POINT

 1 ► 経営承継円滑化法の目的
 2 ► 自社株承継の問題を解決する
 3 ► 資金調達の問題を解決する
 4 ► 相続税の負担の問題を解決する


 ———— 経営承継円滑化法の目的
 日本経済に欠くことのできない中小企業で、これから事業承継を迎えようとしている企業は、少なくありません。
 しかし、後継者不足というハードルもありますが、後継者が決まっていても、自社株式の承継と相続問題、相続税の問題、事業承継に伴う資金調達など、課題の解決が必要です。

 その対策として、平成20年5月9日に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「経営承継円滑化法」という)が成立しました。
 この法律は、中小企業の経営承継を円滑化するために、次の3つを柱としています。

  ① 遺留分に関する民法の特例
  ② 事業承継時の金融支援措置
  ③ 事業承継税制の基本的枠組み

 ———— 自社株承継の問題を解決する
 中小企業の経営者に相続が発生し、事業継続のために後継者へ自社株式を集中して移転することになります。
 しかし、中小企業の経営者の相続財産は、自社株式がほとんどの場合が多く、遺言書により遺産分割が行われた場合に、後継者以外の法定相続人の遺留分を、侵害することになる可能性があります。

 遺留分の算定基礎となる財産には、相続財産のほか、生前の贈与財産も含まれます。そのため、相続対策で生前に自社株式を後継者に贈与していても、遺留分減殺請求の対象となります。さらに、生前贈与された自社株式は、相続開始時の評価となります。

 後継者が経営努力で売上を伸ばし、自社株式の評価が上がれば、他の法定相続人から遺留分減殺請求額が、増えることになります。後継者の努力は、自分の首を絞める結果になってしまいます。

 このような、遺留分の弊害を解決するために「遺留分に関する民法の特例」が新設されました。


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 法定相続人のうち、配偶者と子供(代襲相続人)、父母(祖父母)には、最低限の取り分(遺留分)が認められています。しかし、兄弟姉妹に遺留分はありません。

 ———— 資金調達の問題を解決する
 中小企業が事業承継を実行する際に、主に次の4つの多額の資金ニーズが想定されます。
 ① 分散した株式等や、事業用資産等の買取り(会社に対する貸付金や未収金の弁済を含む)
teoria-k001.gif ② 相続税や贈与税の納税資金
 ③ 経営者の交代により信用状態が低下することで、資金繰りの悪化
 ④ MBOやEBO等による、親族外承継の株式などを買い取る資金

 そこで、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者などが、次の金融支援措置を
受けることができるようになりました。
 ① 中小企業信用保険法の特例(法第13条)
 ② 株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例(法第14条)

 ———— 相続税の負担の問題を解決する
 含み資産が多く、業績も良い優良企業は、自社株式の評価が高くなっています。後継者が贈与や相続により株式を取得する際に、贈与税や相続税が負担になり、事業承継に支障が出る可能性があります。その負担を軽減するために、納税猶予する制度です。

 この制度の利用には、要件に合致することが必要になります。


info02 次回タイトル
 【遺留分に関する民法の特例ってなんですか?】(その1)
  H27.5.15更新予定です。 どうぞお楽しみに!
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