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なかの語録

100年企業をめざす「事業の承継」(第2回)

【連載】事業承継入門|2013年02月01日(金)

 経営者の中には、早々に現役を退いて悠々自適の生活を過ごしたいと計画している経営者や、元気なうちは現役を退きたくないと考える経営者もいらっしゃるでしょう。

前者は「引退」にこだわり、事業を誰でも継いでくれればいいと、自己の欲求や利益などを優先してことを進めてはいけません。安易な物の考えで進めず、時間をかけ計画的に承継しなければ、従業員をはじめ関係者に迷惑をかけることになります。

後者は自身の年齢も考慮して、5年後10年後の企業のことを考えて下さい。

teoria-h001.png いずれにれにしても、事業承継は慎重に時間をかけて、親族はもちろんのこと、
 従業員や取引先など関係者から祝福され、次の世代を応援してもらえる事業承継
 としてください。

 


  2.連帯保証債務があって 事業承継に踏み込めません。どうしたらいいでしょうか?

 flair POINTteoria-g-b002.png

1 ►今後の利益と財産処分で、借入金は返済可能か検討する
2 ►のれん分けを検討する
3 ►事業再生を検討する
4 ►将来の見通しを立て、後継者を確保する


     今後の利益と財産処分で、借入金は返済可能か検討する
 
金額の多寡はあると思いますが、多くの中小企業では、借入金を抱えているでしょう。そして中小企業が、金融機関から融資を受ける場合は、必ずと言っていいほど経営者個人が、連帯保証人となります。

 この借入金の使途が、企業成長のための前向きな運転資金や設備投資などであれば、返済目途も付いているでしょう。しかし、支払うべき債務を払えずに、新たな借入金に頼っているようでは、経営は健全とは言えません。まずは、今後の利益と財産処分で、借入金が返済可能かどうか検討してください。

     のれん分けを検討する
 
債務過多の企業経営者は、後継者に借入金を背負わせることができず、方向性を見いだせないまま相続が発生してしまった、という場合もあります。まず、考えなければいけないことは、返済可能額を算出し、何年で債務返還できるのかを知ることです。手順は次になります。

返済可能額を把握
 
損益計算書の経常利益と減価償却費を合計した数字が、年間返済可能金額となります。

正常運転資金を確認
 
貸借対照表の「資産の部」の受取手形と売掛金、棚卸資産の合計から「負債の部」の支払手形と
  買掛金を引いた額になります。teoria-b013.png

要償還債務を計算
 
有利子負債残高(借入金や社債など、元本・利子支払いを伴う負債)から
  運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入れ債務)と余剰資産を引いた額になります。

債務償還年数を算出
 
要償還債務の額を返済可能額で除すことで、債務償還年数が算出されます。返済計画を立て、一部
  債務免除してもらった場合でも、その後に一定の営業利益を確保できる体制を作り上げていってく
  ださい。企業が顧客や取引先から信頼を受け、なくてはならない存在であれば、返済が可能な借入
  金の額を、後継者が把握したうえで承継してもらってください。

 ただし、現経営者と後継者が協力し合い、固定費の引き下げ努力や、原価構造の見直しが必要となります。失敗すれば後継者は、企業と心中することになってしまいます。現経営者は、腹をくくって取組んでください。

 最善を尽くしても、返済不可能な借入金の場合であっても、事業を残す合理性があれば、「のれん分け」として後継者が別会社として事業のみを承継する方法も考えられます。

     事業再生を検討する
 
自転車操業で資金繰りをしているが、近い将来資金ショートする可能性がある場合は、そのまま承継してはいけません。後継者も引き受けたくはないでしょう。このような場合は、事業再生を行い、健全な経営状態にしてから承継することが経営者としての責任です。

teoria-m004.gif事業再生を遂行するには、経営責任をはっきりさせるため、金融機関から経営者の交代が求められることが多くあります。今すぐに事業再生は必要ない状況でも、早めに検討を始めることで、債権者に対する損害も最小限に抑えることができます。

また、中小企業が円滑に事業承継できるように、「第二会社方式」による再生計画の認定制度が創設されました。この認定を受けると、営業上必要な許認可などを承継できる特例や、税負担の軽減措置、金融支援を活用し、事業再生に取り組むことができます。認定を受けるためには、いくつかの条件があります。早めに専門家へ相談することをお勧めします。

     将来の見通しを立て、後継者を確保する
 
連帯保証債務を持つ経営者の事業承継は、法定相続人が後継者となり連帯保証も引き継いでくれれば、金融機関も後継者への引き継ぎを認めてくれることも多いです。しかし、一般的にトラブルの原因となり、引き継ぎは拒まれます。

 将来の見通しが立たない事業を承継する子など法定相続人は、よほどその事業に思い入れがあるからでしょう。倒産確率の高い事業を、承継しようと考える人はいません。優秀な後継者を確保するためにも、経営の健全化に努めて将来の見通しを立ててから、事業承継を行いましょう。


info02 次回タイトル
 【後継者がいないので、事業承継できません。どうしたらいいでしょうか?】
                        H25.3.1 更新予定です。どうぞお楽しみに!!

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